帰国者二世にとっての北朝鮮(後編) 林潤美(リム・ユンミ)さん

帰国者二世にとっての北朝鮮(後編) 林潤美(リム・ユンミ)さん

2018年7月8日に大阪で開催された集会、『在日帰国者は北朝鮮でどう生きたか?~北から逃れた人々を迎えて~』における、林潤美(リム・ユンミ)さんの証言録です。帰国者の子として北朝鮮で生まれた人にとって、北朝鮮での暮らしはどのようなものだったのでしょうか。前・後編2回に分けて掲載します。(聞き手 宋毅)

 

北朝鮮を離れて韓国に住む二人の帰国者をお迎えし、体験を聞く集会にて(2018年7月8日大阪)

 

宋:韓国社会に住んで、もう久しくなると思うんですけど、脱北者ということで韓国での風当たりとか、いろんなそういう差別的なことというのはありますか?

林:実際に韓国で今生活をしながら感じるのは、自分自身も北にいる時は、韓国に対する敵対感情的な教育を受けたし、韓国に住む人は、北に対する敵対教育というか、反共教育をずっと受けてきたというのがあるので、そういう理念の対立というのが長期間あったものですから、それによって生じる、差別というよりは偏見ですが、偏見というものをお互いが持ちやすくなっているのではないでしょうか。ですから自分自身は、差別を受けたというよりも、自分自身に対して、何というんですかね、自分自身を矮小化する、そういうような傾向があります。結局、韓国社会からすると自分たちに対する目線が、経済的にも非常に厳しい北朝鮮から来たということで、貧乏人扱い、乞食扱い、そういう目線で、自分たちを見ているんじゃないかということを、自分が勝手にそういう認識を持ってしまっているということです。

一から十まで、私たち脱北者は、韓国社会への定着のために、すべて新しいスタートをしなければならないので、当然、韓国で生まれた人たちに比べると、そういう部分でのハンディを背負っていかざるを得ないと、それ自体は、差別というような認識ではなくって、当然受け入れるべき社会的なハンディとして考えております。韓国政府自体は、脱北者に対して、差別的、排他的なことはなくて、逆に定着がうまくいくように、いろんな政策を実施してもらっていると、そういう風に感じています。

宋:例えば、今北朝鮮に対してどういう思いがあるか、それから、北に思い残してきたもの、初恋の人かもしれないし、北の友達に伝えたいこととか、そういうものはありますか?

林:自分自身が北で何十年間も生活もして、韓国にも来たのですが、今北に関しての考えとしては、結局、中に住んでいても、北朝鮮のことをわかっていなかったんじゃないか、少ししか知っていなかったんじゃないかということをすごく感じております。正直に申し上げて、北に対する未練はないです。自分の兄も、そういう政治的な犠牲になっていますし。ですが、幼い時の親友とも会いたいし、北に残してきた親戚とも会いたいし、大学生時代に良くしてくれた大学の先生には、特に会いたいという気持ちがあります。

宋:北の金正恩委員長と、韓国の文在寅大統領が板門店で手をつないで渡りましたよね。私は在日の立場として、それを見てすごく感慨深かったんですけど、リムさんはあれを見てどんな風に思われましたか?

林:自分が脱北してから、過去に、今回も含めて三回の南北首脳会談がありましたので、非常に気持ちとしては複雑な思いでいます。一方では、今南北の和解の雰囲気がどんどん進んで、いろんなイベントが多様に繰り広げられているんですが、こういうのを通じて、北朝鮮が核を放棄して、人権問題にきちんと対応してもらえるようになったらいいなと思っているのも、自分の正直な気持ちです。そうなる過程を通じて、北朝鮮が非常に住みやすい、今よりも住みやすい国になってくれるのかなあ、どうなのかなあということをずっと今見守っております。

宋:何か一言、在日に対して、聞きたいこと、伝えたいことなどありますか?

林:平壌に、北朝鮮にいるときにですね、朝鮮総連の代表団とか学生たちが平壌を訪問して、そこで何日間か過ごすんですが、その姿をテレビを通じて見た時に、ああ、あの人たちは別世界の人たちだなということをすごく感じたことがあります。自分としては、ああいう人たちと、北にいる時にいろんな話をしてみたかった。で、その方たちが、日本に帰る時の姿を見て、本当にうらやましいな、あの人たちは帰れるんだなということをすごく感じました。

二つ目は、朝鮮総連の人たちが平壌に来て、忠誠心を指導者に対して示したり、大声で叫んだり、万歳を叫ぶ姿を見て、あの人たちは資本主義社会で、自由が保障されているにもかかわらず、本当に心底それを思って、ああいう万歳を叫んでいるのかどうかということが、自分はいつも心の中で引っかかっておりました。自分たちは北朝鮮内で、洗脳教育を受けているから仕方ないにしても、なぜあの人たちがあそこまでできるのかというのが、正直自分の気持ちの中でずっと引っかかっていた問題であります。

宋:今日はソウルからわざわざ来ていただき、ありがとうございます。また日本に来られた時にはお会いしましょう。ありがとうございました。(了)

 

雨の神戸の街で 右 朴永淑(パク・ヨンスク)さん 左 林潤美(リム・ユンミ)さん 母娘